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【1号ファンド報告】5社承継・全件ノーライトオフ。 ロケットスター経営陣が語る投資哲学と再現性の設計

2026/5/29

お知らせ

【1号ファンド報告】5社承継・全件ノーライトオフ。 ロケットスター経営陣が語る投資哲学と再現性の設計

2024年7月、ロケットスター株式会社は1号ファンドのレイズを開始した。同社は自らを「経営者が創った、経営者のためのファンド」と表現する。創業・上場・売却・PMIを経験したベンチャー経営者がGPを務め、起業家・経営者に対象を絞ったLPを厳選した。その結果、6ヶ月後の12月31日に18億円のファイナルクローズを完了した。この速度は、LPの数を追ったからではない。資金の総量より、誰と組むかを優先した結果である。

その後、2025年の初年度から2026年3月まで5社の事業承継を実現し、全件稼働中・ノーライトオフという実績を積み上げている。LP向けタームシートに明示したIRR20%目標を上回るペースで運用が進む中、初年度が終わった今、その投資哲学と再現性の設計を改めて問い直す場を設けた。取締役COOの山家秀一と取締役の八田浩に、代表の荻原猛が率直に語りかけた。

●対談者 荻原 猛(代表取締役社長CEO) 山家 秀一(取締役COO) 八田 浩(取締役)


■ 全件ノーライトオフ。投資規律が生んだ実績


荻原: 5社・全件ノーライトオフ。数字の意味を二人から聞かせてください。


山家: ノーライトオフは目標ではなく、投資規律の結果です。私たちは案件選定において、サーチャーが深く理解している業界の企業を対象にするという方針を徹底してきました。サーチファンドの最大の強みは、サーチャーから入れることです。業界の知見と知識が会社選定の目利きになる。財務データを分析するだけでなく、その業界で何年もキャリアを積んだ人間が事業の実態を見るから、解像度が全く違う。この解像度の深さが、私たちの財産です。だから見送るべき案件を見送れた。


荻原: 私たちには最初から一つのルールがあります。投資対象を、デジタルマーケティングおよびベンチャー型ビジネスモデルと親和性の高い経営課題を持つ企業に限定する。業種を絞っているのではなく、私たちが最も価値を発揮できる経営課題に絞っている。販売力が弱い、デジタル化が遅れている、AIを活用できていない。この課題は業種を問わず日本中の中小企業に存在する。だからスケールできる。このルールがノーライトオフの土台であり、2号ファンドの再現性の根拠でもあります。


八田: 財務ストラクチャーの観点から補足すると、投資判断に関わる超重要パラメーターは株価・収益予測・EXIT時の利益目標など3〜4項目あります。3名全員がこれらの数字に責任を持てない案件は実行しない、というルールを守ってきた。IRR20%をタームシートに明示した以上、それを下回る投資を積み重ねることは許されません。2026年3月末時点で目標を上回るペースで運用できているのは、このラインを崩さなかったからです。


荻原: 今ある課題も率直に教えてください。


山家: 投資スピードです。品質基準を優先した結果、ペースは当初計画より慎重になりました。ただしこれは想定内の判断です。サーチャーの採用パイプラインはすでに10名超が待機中であり、次のサイクルでは承継件数を大幅に拡大できる体制が整っています。


八田: 私はソーシングの多様化が課題だと思っています。現在はサーチャーから入る案件が中心ですが、承継案件ありきで入る方法も並行して模索したい。銀行連携を深めることで、金融機関が持つ案件情報に早期にアクセスできる体制を作ることが、スピードと量の両立につながると考えています。



■ オペレーショナルアルファとプレイブック型モデル


荻原: 投資家の方に「どこで超過収益を出すのか」と聞かれたとき、どう答えますか。


山家: 当社の投資哲学の核心は、財務エンジニアリングだけではなくオペレーショナルアルファ、つまり経営改善による超過収益の追求です。デジタルマーケティング・DX・AIという特定の経営改善手法を、目利きされたサーチャーを通じて複数社に同時展開するプレイブック型投資モデルで、これを実現します。個社ごとに一から戦略を立てるのではなく、実績のある手法を再現可能な形に落とし込んで展開する。量をこなせるかが再現性のポイントで、このプレイブックがあるからスケールできる。


荻原: 機能した証拠を具体的に。


山家: 1社目の飯島さんの会社では、新サービスを作り、BtoBマーケティングの仕組みを構築し、直接クライアントに営業して発注をいただくことを、新たに始めました。投資直後から何社もの発注が入り業績が大きく伸びた。新規クライアントの獲得こそが、マイクロキャップ企業の業績改善において最も重要なドライバーの一つです。


北方さんが社長を務めるキャセリーニでは、元ソウルドアウトのメンバーに社内に入ってもらい、ECを改革しています。北方さんの知見を活かし、ECにフィットした商品開発も進んでいます。投資してからまだ間もない時期ですが、EC売上が既に伸び始めています。社長が現場に出たり、業務提携を打診するなどハンズオンで動くと、事業改善のスピードが驚くほど上がる。このGPと社長との連携こそが、オペレーショナルアルファの実態です。


投資検討時にコンペになっても勝てるのは、売主から見て、サーチャーという新社長の顔が見えるからです。業界への理解の深さと、GPの経営経験の両方が伝わることで、単なる買い手ではなく経営の継承者として認識される。これが当社が選ばれる理由です。


荻原: 八田さんは投資委員会体制をどう評価していますか。


八田: 外部の視点を投資委員会に組み込むことは、私たちが意図的に設計したガバナンスの核心です。丸紅コンシューマープラットフォーム代表の橋本さん、元ジェイ・ウィル・パートナーズ創業パートナーの大野さんはいずれもPEファンドの純粋な論理で投資を見てきた方々です。事業家である私たちの判断が甘くなる部分を、投資シミュレーションの精度という観点から鍛えてもらっています。この緊張感が、投資家に説明できる意思決定を生む構造です。私自身も、財務ストラクチャーを考えることが好きで、LBOに限らずレバレッジのかけ方には無数の選択肢があることを1年間で改めて実感しました。売主や対象会社の状況に合わせて柔軟に設計できることが、当社の強みの一つでもあります。


■ 500名から10名超へ。サーチャー選定と伴走の設計


荻原:私はサーチャーの選定を直接担当しています。2024年以降、経営力があると判断した人材に絞ってスカウトを重ねてきた。加えて、LP・先輩経営者から「この人を一度会ってみて」という推薦が数多く届く。推薦で来る人材は質が高く、LPネットワークがサーチャー供給においても機能している証拠だと思っています。こうして500名超と面談し、その中から50名超を適格と判定した。面談から適格判定に至る確率は約10%。現在5名がサーチャーとして稼働しており、別途10名超が次期サーチャーとして待機中です。この厳格な選定基準がサーチャーの質を担保しています。


面談でどういう素養を見ているか、私から一言だけ。業界知見の深さ、中小企業経営への覚悟、そして逆境での意思決定の質です。この3点が揃っている人材だけが、サーチャーとして機能します。山家さん、サーチャーから選ばれる理由をどう考えていますか。


山家: サーチャーが当社を選ぶ理由は明確です。GPが事業会社経営者の出身であることで、経営の葛藤や迷いへの解像度が高い。私自身、COOも社長も経験しているので、サーチャーが直面する組織課題や意思決定の壁はよくわかります。それが伴走の質につながっています。加えて、起業家・経営者で構成されるLP(出資者)の皆さまとのネットワークが、ソーシング・業務提携・売却先紹介まで機能する実質的なエコシステムを構成している。サーチャーが事業成長に時間を使える環境を、GP・LP含めたチーム全体で作ることができていると感じます。


荻原: 伴走の仕組みを具体的に。


山家: 全サーチャーとの週2回のミーティングが軸です。数字・意思決定・感情の三位一体で伴走する設計で、承継起業家をひとりにしないというコンセプトを実際の仕組みとして運用しています。週2回というのは、多いと思うかもしれませんが、承継直後の社長が1週間に直面する課題の量を考えると、これくらいの頻度がないと解像度が保てません。


また荻原さんも全サーチャーと毎月メンター面談していますし、皆が参加するRSG(リアル・セッション・ギルド)も定期開催していますよね。サーチャー同士が経営の実践知を共有する場で、ここで生まれた知見がプレイブックにフィードバックされていく。


八田: 私はソーシング面でサーチャーを支えることが多いです。自ら営業することもありますし、サーチャーの営業に同行してサポートすることもある。サーチャーが事業成長に集中できるよう、ファンドがソーシングの厚みを担う設計です。DDにおいても、AIを活用して調査の時間を大幅に短縮する工夫を重ねています。ビジネスへの理解が深い経営者目線で見ると、一瞬で判断できることも多い。そこにAIを組み合わせることで、精度とスピードを両立できるようになってきました。



■ AIと再現性。次のフェーズに向けて


荻原: ソーシング・面談・DD・PMI・承継後の数字管理まで、AIを活用することが当社の特徴の一つになってきました。面談のAI活用も、まだまだ発展の余地があると思っています。この1年でどう進化しましたか。


山家: PMIのAI化は、まだやれることがたくさんあります。承継前の準備から始まり、100日プランの設計、モニタリングのダッシュボード化まで、AIで横ぐしを刺すことで全サーチャーの状況を同時に把握できる仕組みを作り始めています。実践しながら改善しているところです。今は5社ですが、これが20社・50社になったとき、モニタリングの精度を落とさず運用するにはAIによる構造化が不可欠です。


八田: ファンドを立ち上げた2024年と現在では、AIの活用方法が別物になっています。DDにかかる時間の短縮、投資判断データの整理、承継後の数字管理ダッシュボードの精度。どれも驚くほど改善されました。AIをツールとして使うのではなく、投資プロセスの構造に組み込んでいる。GPがデジタル会社創業者であるという素地があってこそ、この速度で進化できています。LP評価においても、この点は高く評価されている部分です。


荻原: 再現性という言葉をよく使いますが、再現できると確信していますか。


山家: 確信しています。プレイブック型投資モデル・AIの一気通貫活用・サーチャーへの徹底した伴走、この3つが揃っているから再現できる。重要なのは、この3つが独立して機能しているのではなく、互いに支え合う構造になっていることです。サーチャーの目利きがあるから良い企業を選べる。良い企業を選べるからオペレーショナルアルファが機能する。プレイブックがあるから伴走の質が上がる。伴走の質が上がるからサーチャーが集まる。この循環そのものが、ロケットスターの競争優位です。


八田: 加えて言えば、当社はまだ伸びしろだらけです。銀行連携のソーシング、財務ストラクチャーの多様化、PMIのAI化。やりたいことが具体的に見えていて、それを実行できるチームがある。ノーライトオフという実績は、この方向性が間違っていないことの証明だと思っています。


荻原: 事業への深い理解、投資規律の徹底、サーチャーへの本気の伴走。この3つが揃っているからノーライトオフという実績が生まれた。次のフェーズでは、この再現性をより多くの企業に届ける。それがロケットスターの使命であり、2号ファンドへの布石でもある。山家さん、八田さん、ありがとうございました。


※本記事中の数値は2026年3月末時点の運用実績に基づく。IRRは未実現ベースでの計算を含む。



【用語解説】

ノーライトオフ

投資した全案件において、損失や減損(資産価値の切り下げ)が一切発生していない状態のこと。複数の企業に投資するファンドでは、統計的に1〜2件の失敗が生じることが多い。全件で損失ゼロを維持していることは、投資先の選定精度とリスク管理の実力を示す指標として、機関投資家から重視される。


タームシート

投資条件の主要事項をまとめた合意文書。目標リターン(IRR)、投資期間、費用の取り扱いなど、ファンドとLP(出資者)の間で交わす重要な約束事が記載される。法的拘束力は限定的だが、双方の合意の証拠として機能する。


オペレーショナルアルファ

投資先企業の経営を直接改善することで生み出す超過収益のこと。財務構造の最適化や売買のタイミングによって利益を得る従来型の手法と対比される。具体的には、デジタルマーケティングの導入・業務効率化・AI活用などを通じた売上成長が主な手段となる。


プレイブック

特定の局面で有効と検証された手法を体系化したマニュアルのこと。スポーツにおける作戦集が語源。ロケットスターでは、承継後の企業価値向上に有効なデジタルマーケティング・DX・AI活用の手順を標準化し、複数の承継企業に同じ手法を展開する仕組みとして機能している。


GP・LP

GPはゼネラルパートナー(無限責任組合員)の略称で、ファンドを運営し投資の意思決定を行う主体。ロケットスターがこれにあたる。LPはリミテッドパートナー(有限責任組合員)の略称で、ファンドに資金を出資する投資家のこと。LPは出資額を上限とした有限の責任を負い、運営の意思決定には関与しない。


DD(デューデリジェンス) 投資判断を行う前に実施する詳細調査のこと。財務・法務・税務・事業の4領域が主な対象となる。財務DDでは帳簿の正確性や債務の状況を、法務DDでは契約関係や訴訟リスクを、事業DDでは収益の持続性や競合環境を検証する。買収価格の妥当性や潜在リスクを明確にする目的で行われる



【対談者プロフィール】

荻原猛 代表取締役社長CEO

1973年生まれ。中央大学大学院戦略経営研究科修了。経営修士マーケティング専攻。

大学卒業後、起業するも失敗。インターネットの魅力に気付き、2000年6月に株式会社オプトに入社。2006年4月に広告部門の執行役員に就任。2009年にソウルドアウト株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2017年7月にマザーズへ上場、2019年3月東証一部へ市場変更し代表取締役会長に就任。2022年3月に株式会社博報堂DYホールディングスによるTOBにて100%子会社化。1年間のPMIを経て、2023年3月にソウルドアウト取締役を退任。株式会社ロケットスターを設立し代表取締役社長に就任。

山家秀一 取締役COO

1980年生まれ。グロービス経営大学院(MBA)修了。
2005年に株式会社オプト(現デジタルホールディングス)入社。コンテンツ事業部、アフィリエイト事業部、全社改革などの責任者を経て、2009年に荻原(現ロケットスター代表)とソウルドアウト株式会社を創業。取締役グループCOOとして事業拡大を牽引し、2017年マザーズ上場。2018年からグループ会社SOテクノロジーズ株式会社の代表取締役社長に就任し事業を拡大。グループの新たな事業柱を創ると同時に、50名超のエンジニア組織やSaaS(Software as a Service)プロダクトを創るなど、グループ課題だったテクノロジー強化を実現。2022年12月に退任。

その後、株式会社ロケットスターを創業し、2023年4月に取締役COOに就任。

八田浩 取締役

1977年生まれ。明治大学経営学部卒業。
2001年東海東京証券で社会人をスタート。2004年株式会社オプト(現デジタルホールディングス)に入社し、以後2018年まで大手総合広告会社との資本提携、大手通信会社との合弁会社設立、動画配信システム会社の買収とその後の経営などマーケティング、システム開発、メディアビジネスなどデジタルの最前線に。

その過程で数多くの新規事業を自社だけでなく、アライアンス企業や顧客企業とともに立ち上げ、事業投資・M&A・PMIなどを経験。
「企業の持続的成⻑には新しい販路と用途開発が必要」という確信に至り、大企業だけでなくあらゆる挑戦企業に資金とマーケティングを提供し、多くの企業の企業価値向上に貢献するべく株式会社ロケットスターの設立に参画。


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