2026/6/19
お知らせ

ロケットスターのオフィスは、ファインドスターグループが提供するシェアオフィスの一室にある。物理的な距離が近いだけではない。ファインドスターグループ代表・内藤真一郎氏は、ロケットスターにとって最初期のLPであり、オフィスを貸す大家であり、人脈を惜しみなく差し出してくれる先輩経営者でもある。起業家・ベンチャーの成長を支えることを掲げ、社内人材を経営者として育てる仕組みを長年実践してきた内藤氏は、荻原猛という人間の何を見て、まだ実績のないファンドに「最初の一人」として手を挙げたのか。
スピーカー
内藤 真一郎(ないとう しんいちろう)
ファインドスターグループ代表。「起業家・ベンチャーの成長のためのプラットフォームを創る」をミッションに掲げ、社内人材を経営者として育て、グループ会社の経営を任せる仕組みを長年にわたり実践してきた。現在11社のグループ会社を束ねる連結経営の実践者。ロケットスター1号ファンドの最初期LPの一人であり、オフィス提供、サーチャー候補・クライアント候補・出資者候補の紹介、経営助言など、立ち上げ期から多面的に支援して頂いている。
インタビュアー
荻原 猛(おぎわら たけし)
株式会社ロケットスター 代表取締役社長CEO。3度目の起業として、サーチファンドを通じた事業承継と中小企業の成長支援に取り組む。前職ではソウルドアウト株式会社を創業し、中小・ベンチャー企業向けデジタルマーケティング支援事業を展開。東証上場を経て、2022年には博報堂DYによる約200億円のTOBにより売却。起業、失敗、上場、売却に至る一連の経営経験を有する。
荻原:
本日はお忙しい中、ありがとうございます。内藤さんには、ロケットスター1号ファンドの本当に最初期にご出資いただきました。正直に言うと、内藤さんが「いいよ、出すよ」と言ってくださったあの夜に、自分は腹をくくれたんです。内藤さんがそう言ってくれるのであれば、もう絶対にやろうと。あれは今でも忘れられません。まだ実績もない段階で、なぜ決めてくださったのでしょうか。
内藤:
まず、「実績がない」というのは違いますよね。
おぎさんはSOLD OUTをゼロから創業して、上場まで持っていった経営者です。ゼロから事業を作って、大きくした。それ自体がもう大きな実績じゃないですか。当然、リスペクトしかありませんでした。
ただ、おぎさんが「もう一度、広告会社を作ります」という話だったら、「それはうちじゃなくてもいいかな」と思ったかもしれません(笑)。応援はしたと思いますけどね。
一方で、サーチファンドという仕組みには、もともと強く惹かれていました。当時ちょうど新聞紙上を賑わせていましたよね。アメリカ発祥の仕組みが日本に入ってきている、と。自分でも調べていて、知れば知るほど面白いと思っていた。うちで何かできないか、と考えていたくらいです。
そこに、おぎさんという信頼できる人間が「サーチファンドに興味がある」と言ってきた。僕からしたら、二つの奇跡が一緒に来たような話ですよ。だから迷いはなかった。神楽坂の居酒屋で、持ち帰らずにその場で「出しますよ」と即答したと思います。
荻原:
ありがとうございます。あの一言で、本当に勇気が湧いたんです。

荻原:
内藤さんは、サーチファンドのどこに一番可能性を感じているのでしょうか。
内藤:
僕はね、経営者としての能力と、ゼロから事業を作る能力は、まったくの別物だと思っているんですね。世の中では、起業家として成功した人が経営力も事業を生み出す力も、両方持っているように見える。だから「ゼロイチができないと社長にはなれない」と思われがちです。でも、実際は違う。ゼロから市場を作り、顧客を作り、商品を作り、そこから更に組織を作っていくのは、相当ハードルが高い。一方で、すでに顧客も売上も商品もオペレーションもある会社でなら、経営者として力を発揮できる人はたくさんいます。
社長になる器はある。でもゼロイチ型ではない。そういう人と、後継者がいないために消えていく会社。その二つをブリッジするのがサーチファンドですよね。これは社会にとっても、ものすごく意味がある。能力を切り分けたという発想自体が、僕は新しいと思いました。
荻原:
私たちは、そういう人材を「承継起業家」と呼んでいます。
内藤:
いい言葉ですね。承継起業家は、立派な「事業家」だと思いますよ。ゼロから作る起業とは違うけれど、会社を引き継いで、代表取締役社長として意思決定し、伸ばしていく。そこには経営者としての覚悟が要る。むしろ日本では、その形の事業家がもっと増えていい。
荻原:
内藤さんは、ファインドスターで社内人材を経営者として育ててこられました。経営者育成という観点から、ロケットスターのモデルをどう見ていますか。
内藤:
僕はずっと、「ポジションが人を作る」と思っているんです。
経営者は、研修だけでは育たない。学ぶことも大事ですが、最後は本当に意思決定するポジションに立てるかどうかです。社長という肩書きがあっても、何を決めるにも親会社にお伺いを立てるのなら、それは実質「部長」ですよね。社長という名の部長。それだと、経営者として育つ要素が削られてしまう。
でも、自分で決める立場になると変わる。オフィスの移転ひとつでも、自分で決めて、失敗したら自分の責任になる。人を採るのも、投資するのも、撤退するのも、最後は自分で決める。その経験が人を作るんです。経営者を作るのは、結局、最終意思決定の経験なんですよ。
荻原:
ロケットスターは上司ではなく、株主です。承継後は、サーチャーが社長として最終意思決定をする。その構造を何より大切にしています。
内藤:
そこが核心だと思います。僕自身、グループ会社の社長たちには、よほどのことがない限り口を出しません。オフィス移転だって、彼らは「決めてから」報告してくる(笑)。失敗したら彼らの責任です。出資はするけれど、意思決定はしない――これが僕のポリシーなんです。経営者を作るのが最終意思決定なのに、そこをこちらが奪ってしまったら、本末転倒ですから。
ポジションが人を作る。そのポジションを「本物」にできるかどうか。ロケットスターの仕組みは、まさにそこに賭けているんだと思います。
正直に言うと、これはうちの反省でもあるんです。僕はずっと、社内からゼロイチで事業を立ち上げようとしてきた。でも、そもそもゼロイチの事業なんて、そんなにポンポン作れない。こだわりすぎて、結局、数が作れなかったんですよ。だったら買ってきた方が早い、と。今のスタイルに切り替えたのは、そういう理由なんです。ポジションを用意できなかった――うちの場合はね。だから、すでにある会社を引き継いでポジションを渡すおぎさんの仕組みは、ゼロイチじゃないぶん再現性が高い。冷静に考えれば、そのほうが理にかなっているんですよ。

荻原:
複数のグループ会社を束ねてこられた連結経営の知見の中で、私たちが今後、最も参考にすべきことは何でしょうか。
内藤:
二つあります。一つは、ナレッジ。組織の作り方や経営の勘所には、結局、実際に経営してきた人間にしか分からないメソッドがある。EOのフォーラムやインターンシップが効くのも、そこです。
もう一つ、僕がうまくいった本質だと思っているのが「競争」なんです。
うちのグループは、もともと同じ釜の飯を食った仲間が社長をやっている。どこかで「みんな同じだ」と思っているんですよ。そこで、たとえば千葉が突き抜けるでしょう。僕からすれば「すごいな」と思う。でも、本人たちからすると、面白くないわけです(笑)。
これがいいんですよ。面白くないって、最高じゃないですか。負けたくない、突き抜けたい、という火がつく。僕自身、EOに入っていなかったら、たぶんそこそこの会社で終わっていたと思う。目の前でみんながどんどん大きくなっていくから、不思議と腹が立つわけですよ。できもしないのに(笑)。でも、それでいい。お山の大将にならずに済む。
「みんなで目標を目指しましょう」では、個が際立たない。サーチャーも、最初はみんな同じようにサラリーマンをやっていて、会社を引き継いで、伸ばしていく。規模は違っても、伸ばす過程は同じです。だからこそ、その中に競争文化を持ち込めると、内側から「やってやるぞ」というエネルギーが出てくる。これは、コミュニティ運営において超重要だと思っています。
荻原:
ナレッジと競争を、両立させているんですね。
内藤:
強いて言えば、競争のほうが効くかもしれない(笑)。

荻原:
1号ファンドの年間レポートもご覧いただきました。5社の事業承継を完了し、全件が稼働中、ノーライトオフで進んでいます。率直に、どう感じられましたか。
内藤:
いい意味で、予想外でしたね。初年度からかっ飛ばした。まさにロケットスタートじゃないですか(笑)。
M&Aは、買って終わりではありません。買った後に、誰が経営して、どう伸ばすのか。そこが本質です。ロケットスターは、サーチャーが代表取締役社長として入り、ロケットスターが支援して伸ばす。単なる投資ではなく、経営グロースを実現しようとしている。そのモデルが実際に動いていることに、一番の意味があると思います。
この間、あるPEファンドの方が言っていました。「グッドカンパニーは買うが、ベストカンパニーは買わない。グッドをベストにするのが我々の仕事だ」と。これは本質だと思います。ベストの会社は、もう伸びしろがない。そもそもベストだから、買っても伸びないんですよ。経営が大したことないのに、それでもちゃんと利益が出ている――そういう会社が最高なんです。ビジネスモデルとマーケットは合っている、経営が下手なだけ。そこを買って、ちゃんと伸ばす。コストカットには限界があるけれど、トップラインは伸ばせる。それが数字に出たんだと思います。
荻原:
内藤さんには出資だけでなく、サーチャー候補やクライアント候補、さらには出資者候補のご紹介まで、本当にあらゆる面で支えていただいています。僕らのような会社にとっては、内藤さんがお考えになっている何倍もありがたい。なぜ、そこまで動いてくださるのでしょうか。
内藤:
一つは、僕の人生哲学なんですが、人に何かしてあげることを「貯金」だと思っているんです。信用貯金ですね。
人にものを頼むのは、相手を動かすことだから、本来すごくパワーがかかる。でも、普段から貯金があれば、いざ自分が困ったときに頼みやすいし、助けてくれる人もたくさんいる。それが安心材料になる。でも一番は、単純に、人に何かしてあげるのが好きなんですよ。喜ばれて、そのおかげで縁がつながって、うまくいく。心が豊かになるじゃないですか。
ただ、紹介には、紹介する側の責任もあります。こちらの信用も使うわけですから。「この人なら大丈夫だ」と思えないと、人はつなげない。おぎさんの場合は、実績も人柄も知っているし、ロケットスターでやろうとしていることにも意味があると思っている。だから、必要だと思えば動きます。
それに、してあげたことを覚えている人と、そうでない人がいる。恩着せがましく言うつもりはないけれど、みんな、ちゃんと見ているんですよ。分かっている人から相談されたら、こっちもまた頑張る。おぎさんは、ちゃんと感じてくれている人ですから。

荻原:
最後に、2号ファンドはより大きなスケールで挑みたいと思っています。先輩経営者として、期待することと、「ここは言っておくぞ」ということを聞かせてください。
内藤:
1号は、いい意味で「テスト」だったと思うんです。おぎさんにとってのゼロイチ。でも、もう結果が出て、方程式もできて、知見も溜まった。一巡したフェーズです。
だったら、また同じサイズのファンドをちまちま作るのは、もったいない。同じ労力をかけるなら、僕ならロイヤルな顧客に絞って、最低でも二桁億を一気に作ります。実績が出ているなら、機関投資家からも集めやすいはずです。承継する会社の規模も、これからスケールしていくでしょうしね。
ただ、大きくしていく中でも、本質だけは守ってほしい。サーチャーが本当に社長として意思決定すること。ロケットスターは支えるけれど、上司にはならないこと。「ポジションが人を作る」ということ。仕組みが強くなりすぎて、現場の社長が決められなくなったら、ただの管理型の投資に戻ってしまいますから。
ロケットスターは、会社を買うファンドではなく、経営者を生み出す仕組みです。承継した会社を伸ばせれば、投資家にとっても、サーチャーにとっても、売主オーナーにとっても、社会にとっても意味がある。それを、ぜひ証明し続けてほしいですね。応援していますよ。
荻原:
その言葉、しっかり受け止めます。今日も貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。

内藤さんの言葉で最も印象に残ったのは、やはり「ポジションが人を作る」でした。そして、その裏側で内藤さんが語ったのは、自身の連結経営でも「ゼロイチには限界があった」という率直な反省です。だからこそ、すでにある会社を引き継いで「本物のポジション」を渡すロケットスターのモデルに、再現性という可能性を見ているのだと思います。社長になる器を持つ人材に、代表取締役社長というポジションを渡し、後継者不在の中小企業を次の成長へとつなぐ。そして、ナレッジと競争で、その経営者を育てきる。承継起業家は、これからの日本に必要な、新しい事業家像です。ロケットスターはこれからも、二重の目利きで選び、事業力で育てるという投資哲学のもと、中小企業の経営グロースを実現していきます。
※本インタビューは2026年6月に実施しました。内容は本人確認のうえ掲載しています。
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