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出資者インタビューシリーズvol4 .「会社を残すなら、人に託せ」 ~30年経営をした創業者が語る事業承継とサーチファンドの可能性~

2026/7/21

お知らせ

出資者インタビューシリーズvol4 .「会社を残すなら、人に託せ」 ~30年経営をした創業者が語る事業承継とサーチファンドの可能性~


スピーカー 大塚 雅一(おおつか まさかず)

株式会社キッズコーポレーション ファウンダー・名誉会長。1966年栃木県生まれ。拓殖大学政経学部経済学科卒業後、幼稚園勤務を経て、1993年12月、27歳で宇都宮市内のワンルームマンションからベビーシッターサービスを創業。1995年に法人化し株式会社キッズコーポレーションを設立。病院内・企業内保育所の運営受託を軸に事業を拡大し、全国270施設超を展開する国内最大級の保育サービス企業へと育て上げる。2022年7月、ユニゾン・キャピタルへの株式譲渡を実施。2023年の創業30周年を機に代表取締役を退き、現職。藍綬褒章・紺綬褒章受章。2025年11月、一般社団法人栃木イノベーションベース(TCGIB)を設立し、代表理事に就任。

インタビュアー 荻原 猛(おぎわら たけし)

株式会社ロケットスター 代表取締役社長 CEO。2000年にオプト(現デジタルホールディングス)入社。2006年に広告部門の執行役員に就任。2009年にソウルドアウト株式会社を共同創業し代表取締役社長に就任。地方中小企業のデジタルマーケティング支援を事業の柱に据え、2019年東証一部(現:東証プライム)上場を実現。2022年、博報堂DYホールディングスによるTOBで完全子会社化。2023年4月、50歳で三度目の起業となるロケットスターを設立し、マイクロキャップ領域に特化したサーチファンドを運営する。


■ ロケットスターへの出資を決めた理由

荻原:

本日はお時間をいただきありがとうございます。大塚さんにはロケットスター1号ファンドへのご出資をいただきまして、改めて感謝しています。今日は、なぜ出資を決めたのか、また長年地方で経営されてきた経験やファンドへの株式譲渡のご経験も踏まえながら、率直にお聞かせいただければと思います。

大塚:

出資の決め手は、荻原さんという経営者ですね。迷いや懸念はほとんどなかったです。あえて言えば、金額をいくらにするかということだけでした(笑)。

それと、ビジネスモデルが良かった。正直に言うと、サーチファンドというものをそれまで知らなかったんですよ。でも話を聞いて、これは今の日本に必要だと感じました。後継者がいないという理由だけで廃業・倒産していく会社がある。うまく承継して成長させることができれば、国力の強化になる。期待しかないと思いましたね。

先輩起業家から以前、投資においてはビジネスモデルも大切だが、経営者次第だよという言葉をいただいていました。その観点から見ても、荻原さんは一から上場企業を作り上げた実績がある。そしてその実績がありながら謙虚である。人として非常に高く評価しています。さらに言えば、荻原猛という人が私の中ではすべてに勝る、とそう思っています。

荻原:

もったいないお言葉です。ありがとうございます。

■ 地方で30年戦い続けた経営者として

荻原:

大塚さんは栃木から一度も拠点を動かさず、全国規模の会社を作り上げました。地方で経営し続けることのアドバンテージとハンデ、両方を率直に聞かせてください。東京に出ないという選択に、迷いはありましたか。

大塚:

ハンデは数多くありましたね。全国展開していたので、ある程度の規模になるまでは営業先から「なんで栃木なの?」「東京じゃないんだ」「会社、小さいんじゃないの?」なんて言われることもあって。実力以上に小さく評価されているなと感じることは確かにありました。関東なら本社は東京、関西なら大阪というのが普通ですから、仕方がないとは思っていましたけどね。

一方でアドバンテージもあって。地方では目立った企業が少ないので、テレビなどのメディアにすぐ取り上げてもらえる。これはやっぱりメリットでした。

ただ、そこには落とし穴があって。売上が伸びてメディアに取り上げられるようになると、自分の会社はすごいんじゃないかと勘違いする経営者が出てくるんですよ。井の中の蛙になってしまう。ぬるま湯につかって、気づかないうちに茹でガエルになってしまう。それが地方経営者の落とし穴だなと思っていて。

だから私も、東京に出るかどうかで揺らぐことは正直ありましたよ。生まれ育った地方を活性化したいという思いがあって宇都宮に本社を置いていましたが、それでも何度か迷いましたね。

荻原:

「茹でガエル」という感覚、なるほどです。地方の経営者と東京の経営者との違いの一つに規律の違いがあるのかな、という印象です。東京の方が株主・社員・銀行・顧客・仕入先、あらゆるステークホルダーが常にプレッシャーをかけてくる。その緊張感の中で鍛えられていく部分がある。

大塚:

そうそう、まさにそれ。自分の会社も、自分のスキル以上に伸ばそうとしていたから、不安で眠れない夜が何度もあって。夜中にメールを社員にガーッと送って、翌朝「社長、いつ寝てるんですか?」って言われるような日々でしたよ(笑)。それぐらいやらないとベンチャーはすぐ潰れますから。ましてや、成長していなかない。

地方の経営者には、その不安をエネルギーに変えられるかどうかが、分かれ道だと思っています。

■ ファンドへの株式譲渡、経験してわかったこと

荻原:

2022年、ユニゾン・キャピタルへの株式譲渡を決断されました。その経緯と、実際にファンドと付き合ってみて、想定内だったこと・想定外だったことを率直に話してください。

大塚:

もともと上場を目指していて、監査法人も入れて証券会社も決まっていた。そういう状況でたまたまファンドから買いたいという話があって、すごく悩んだんですよ。

最終的に決め手になったのは、年齢でした。57歳で上場したとして、そこから少なくとも5年、場合によっては10年近く上場企業の経営者を続けるのかと考えたら、自分には想像できなかった。30年間経営してきて、そこまで牽引する絵が描けなかったんですよね。

スティーブ・ジョブズの「最後の手紙」と言われるものを以前から頭に置いていました。ある程度の資産を築いたら、本当に愛する人と一緒にいればよかった、という言葉。それも大きな判断基準になりましたね。

副社長が先に交渉に行って、3回目ぐらいに「社長、相手は本気です。決断してください」と言われて。その時に「社長バッジが欲しいか、キャッシュが欲しいか」と副社長に聞かれた。二者択一で考えたら、自分の答えは出ていました。

それと、娘たちに会社を継ぐかと聞いたら、ほぼ即答で継がないと言って(笑)。だったらプロに任せた方がいいという判断もありました。複合的な要因が重なって、譲渡を決めた感じです。

荻原:

最初、ファンドからアプローチがあった時はどんな印象でしたか。

大塚:

正直、最初は「うちにも来るんだー」と他人事のように思いました。それまでファンドの人たちと付き合ったことがないので、なんか騙されるんじゃないかなって部分もありました(笑)。ちょっと怖いな、という気持ちは最初にありましたね。

でも実際に会って話してみると、担当の方が子育て中のお父さんで、私が書いた『キッズアプローチ』という本を読んで共感してくれていた。数字だけでなく、会社の理念や文化、社員との信頼関係を見てくれているなと感じて。この人たちだったら、きちんと私たちの方針を守って伸ばしてくれると思えた。それで安心できましたね。

荻原:

実際に付き合ってみて、ポジティブだったことはありましたか。

大塚:

優秀な人材を連れてきてくれたのは良かったですね。ファンドが持っているというだけで倒産リスクが低いと見られるので、人が来やすくなるんですよ。ベンチャー企業だと何度も口説かないといけないところが、スムーズに動けた。それはやっぱりファンドの力だなと思いましたね。

企業価値を高めるプロに任せるというのは、創業者として間違いではないと今でも思っています。

■ ファンドとロケットスター、何が違いますか

荻原:

ユニゾン・キャピタルとのご経験を経て、ロケットスターのサーチファンドをどう見ていますか。違いを感じるところはありますか。

大塚:

私の中では、PEファンドは資本の力で企業価値を高めるモデル。サーチファンドは経営者の力で成長させるモデル。構造が違うんだと思っています。

サーチファンドは、誰が経営するかが全てだと思う。そこの精査をロケットスターはしっかりやっているから、5社承継して全社伸びているんじゃないかと。

よくベンチャー経営は、千三つという言葉があるように、うまくいく確率はごくわずかと言われる世界で、柳井さんですら一勝九敗とおっしゃっている。その中での5社承継・全社成長というのは、本当にとてつもないことだと思っています。

少年野球でも高校野球でも、監督が変わると強くなるチームがありますよね。指導者が変わると組織が変わる。ロケットスターのモデルはそれに近いんじゃないかな。誰が社長をやるかで、会社はまったく変わるということを、自分のキッズコーポレーションでも実感していますから。

■ 栃木IBで共に動く仲間として、荻原猛をどう見ているか

荻原:

栃木イノベーションベースを一緒に立ち上げて、一緒に動いてきた中で、荻原猛について、経営者として、地方への向き合い方について、聞かせてください。

大塚:

荻原さんは成功しているにもかかわらず、とても謙虚ですよね。これは簡単なようでとても難しいことです。また、自分の会社だけでなく、地域全体を良くしたいという熱い思いを持っているのを感じます。

栃木IBも、自分のためではなく次の世代の経営者を育てたいという気持ちで動いているのが伝わってきます。私も同じ思いを持っているので、多くの地方の経営者・起業家を巻き込んで、成功事例を一緒に多く作りたいと思っています。

■ 地方の事業承継と、サーチファンドという選択肢

荻原:

栃木をはじめ、地方には後継者問題を抱える中小企業がたくさんあります。サーチファンドによる承継という選択肢を、地方の経営者にどう説明しますか。PEとの違いも含めて聞かせてください。

大塚:

地方には素晴らしい会社がたくさんありますよね。でも後継者がいないという理由だけで廃業してしまう会社も少なくない。これは日本全体の損失だと思っています。

サーチファンドはお金だけを投資するのではなく、次の経営者を送り込む仕組みですよね。だから、会社を残したい、理念を引き継いでほしいと考える経営者にはとても良い選択肢だと思います。PEファンドもサーチファンドも、それぞれ役割がある。大切なのは、自分が何を一番残したいのかを考えることじゃないかな、と思います。

それと、地方には社長自身がボトルネックになっているケースも少なくない。社員のため、地域の財産として考えれば、外部のプロに任せるという判断は、決して恥ずかしいことではないと思いますね。

ビジネスモデルが固まっていて、あとは投資すれば伸びるとわかっているのに、何年経っても踏み出せない経営者を目の前で見ていると、もったいないと思う。張る時に張らないと、会社は伸びない。そういう場面で、ロケットスターのような外部の力を入れることには大きな意味があると思っています。

■ 1号ファンドの年間レポートを見て、率直にどう感じましたか

荻原:

1号ファンドの年間レポートをご覧いただいて、率直にどう感じましたか。

大塚:

本当に荻原さんらしいな、と思いましたよ。いい意味での想定外でしたね。

承継した5社全社が伸びているというのは、投資する企業をしっかり選んでいること、そして経営を任せる人間を徹底的に選んでいることの証明だと思います。数が増えると選択が雑になるケースが出てきますから、規模が拡大しても今のポリシーを守り続けてほしいですね。

■ 2号ファンドに向けて、期待することと言い続けたいこと

荻原:

2号ファンドは規模も大きく広げたいと思っています。先輩経営者として、荻原猛に期待することと、言い続けたいことを最後に聞かせてください。

大塚:

まず、創業の時の志を忘れないでほしいですね。それを忘れたらうまくいかないと思っています。規模が大きくなればなるほど、原点に立ち返る力が必要になる。

それと、日本を代表するサーチファンドになってほしい。事業承継で困っている経営者にとっても、次の社長を目指すサーチャーにとっても、ロケットスターが代名詞になるような存在を目指してほしいです。

あと一つ、大成功しても謙虚でいてほしい。今の荻原さんを見ていて心配はしていないけれど、あえて言い続けるとすればそこですね。そして、ご自身がいろんな経営者と繋がり、大きな世界を見てきた経験を、栃木IBのメンバーにも伝えてほしい。視座を高く持てる環境を作ることが、地方の経営者を変える一番の近道だと思っていますから。

荻原:

「創業の志を忘れるな」「謙虚であれ」「視座を高く持て」。この三つ、しっかり受け止めます。今日は本当にありがとうございました。

 

※本インタビューは2026年7月に実施しました。内容は本人確認のうえ掲載しています。

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