出資者インタビューシリーズ vol5 .「70社作って学んだことを、オギちゃんは分かってるなと思った」 ~Team Energy株式会社 グループ代表 中村誠司氏が語る、荻原猛に出資した理由~
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2026年10月18日、青森。レジル創業者であり、ロケットスター1号ファンドの出資者である中村誠司氏は、1,500kmを歩く「祈願ウォーク」の38日目を迎えていた。約70社のグループ会社を立ち上げてきた中村氏は、なぜロケットスターに出資したのか。道中に合流し、30kmを共に歩きながら話を聞いた。
大阪府東大阪市で中央電力(現・レジル株式会社)を設立し、日本初となるマンション向け電力一括受電サービスを開始する。同社を売上高約400億円規模へと成長させ、2024年に東証グロース市場へ上場。その後、投資ファンドによるTOBが成立した。2012年にはふるさと熱電株式会社を創業し、熊本県小国町で地域と共生する地熱発電所を開発・運営。2025年に同社を売却。現在はTeam Energyグループとして新規事業の創出と起業家・経営人材の育成に取り組みつつ、グループ会社のGeo Dreamを通じて、地下深部の地熱を活用する次世代地熱発電技術『closed loop(クローズドループ方式)』の実用化に挑戦している。ロケットスター1号ファンドLP。
3度目の起業として、サーチファンドを通じた事業承継と中小企業の成長支援に取り組む。前職ではソウルドアウト株式会社を創業し、中小・ベンチャー企業向けデジタルマーケティング支援事業を展開。東証一部(現プライム市場)への上場を経て、2022年には博報堂DYによる約200億円のTOBにより売却。起業、失敗、上場、売却に至る一連の経営経験を有する。
荻原:
今日は祈願ウォークの道中にお邪魔して、一緒に歩きながらお話を伺っています。改めて、1号ファンドへのご出資、本当にありがとうございます。まず、中村さんがなぜ我々に出資を決めてくださったのか教えてください。
中村:
一番は、荻原さんの経験ですね。
私はこれまで70社ほど会社を作って育ててきました。でも、本当に大きく成長させられた会社は一社か二社です。思うように成長できなかった会社も数多くありました。振り返ると、原因ははっきりしていて、社長への教育と、最初の覚悟の確認が甘かった。
荻原さんは、一緒にやるメンバーを連れてこられる人かどうかを見ているし、何より覚悟を何度も確認していますよね。ああいうことは、普通のファンドの人たちだけではできない。社長を育てるのは、社長を経験した人間が一番うまくいくと思います。
荻原:
ありがとうございます。私たちはこれを「エントリーマネジメント」と呼んでいます。たとえば、一緒に戦うバディを連れてこられるか。これはその人の信用力のバロメーターにもなります。
それと案件発掘の計画であるオリジネーションプランを自ら作れるかで、ビジネスリテラシーを見ます。どんな顧客や人脈を連れてこられるかも確認します。そのうえで、小資源からのグロース経験や、苦しい局面を乗り越えた胆力を、具体的なエピソードで何度も確かめています。
中村:
そこなんですよ。私も以前、「誰でも社長になれる」というプロジェクトをやりました。しかし、結果として多くの会社が思うように成長できませんでした。だから今は真逆の考えです。誰でも社長にしてはいけない。
事業の最初の突破には、何年も走り抜けるくらいの覚悟が要ります。やり切れるのか、と。ただ、それを外から強要したら大問題になる。自分で覚悟を持ってやるのと、強要されてやるのとでは、まったく違いますから。だからこそ、入口で本人の覚悟を確かめることが大事なんです。
それから、管理する力。「逃がさんぞ」という管理です(笑)。私は社長を自由にやらせて、お金を使い切って「もうありません」となった会社をたくさん見てきました。いいネタがあって、やる気のある社長でも、管理を緩めたらすぐにダメになる。ロケットスターはそこをちゃんとやっている。最初に話を聞いた時、一番に感じたのがそれでした。
荻原:
私たちはそれを「規律」と呼んでいます。経営の意思決定は社長に任せる。その代わり、数字と報告の規律は徹底する。自由と規律は両輪だと思っています。
中村:
しかも、ロケットスターは一気に数を増やそうとしていない。私たちは「今年は何社作るぞ」と目標を立てて、その数字を追いかけて失敗してきましたから。私が70社作って学んだことを、オギちゃん(荻原のこと)は分かってるなと思ったんです(笑)。
荻原:
いえいえ、恐縮です。選ぶ基準を下げることはしないように、と考えています。
中村:
実際に付き合ってみて、ロケットスターがいいなと思うのは、オギちゃん、山家さん、八田さんの3人の掛け合いです。それぞれの強みがまったく違う。それが各カンパニーに効いてくるんですよね。
この3人がそれぞれの分野で責任を持っていれば、10社、20社、30社は十分に見られます。これからのファンドは、社員の数ではないと思うんです。責任を持った人が、いいチームで伴走しているかどうか。それがメチャクチャ大事です。
荻原:
ありがとうございます。ドラッカーの言う「強みを生かすチーム」を体現したいと思っています。
荻原:
我々はサーチャー選定がとっても大事になってきます。そんな中、中村さんは多くの起業家や経営者を見てこられました。伸びる経営者と、そうでない経営者の違いはどこにあると思いますか。
中村:
経営チームによっても変わるので一概には言えません。ただ、最近は政財界でもかなり上の方々とお付き合いさせてもらえるようになって、ほぼ言えるのは、皆さん人柄がいいということです。優しさがあって、謙虚で、心がある。こういう人が上に来ます。
一方で、目先の損得で動く経営者や、自分のお金のことだけ考えている人は、どれだけ優秀で学歴があっても、じわじわと外れていく。それ以上は上がっていかないんです。
30代、40代で一気に上に来るのは、ビジネスの旬やタイミングも大きいと思います。でも50代、60代になってくると、謙虚さや感謝、人との付き合い方をちゃんと積み上げてきたかどうかが問われる。それをやってこなかった人には、いざという時に、力を貸してくれる人たちが力を貸してくれないんですよ。年齢と心の姿勢が乖離していくというか。これは積み重ねだと思いますし、私も自分にいつも言い聞かせています。
荻原:
中村さんには、本当に多くのご支援をいただいています。政財界の方々をご紹介いただいたり、大手証券会社のM&Aチームをお招きしてM&A勉強会を開いていただいたり、大阪や京都の起業家の皆さんを次々とつないでいただいたり。私たちだけでは到底お会いできない方々ばかりで、心から感謝しています。
中村:
それは、オギちゃんの姿勢が「この人に紹介したい」と思わせるんですよ。
すごい方を紹介してもらったのに、こちらが礼儀を欠いたら、紹介してくれた人の顔を潰してしまう。二度と紹介してもらえません。だから、きちんと感謝して、手紙を書いたり、お礼をお送りしたりする。当たり前のことですが、上の方々とお付き合いするなら、ここを徹底的にやらないといけない。荻原さんはそれを常にちゃんとしているし、人を大事にする。だから人が集まってくるんだと思います。
EO(起業家団体)で売上300億円以上の経営者と接していても、皆さん本当に丁寧です。一方で、若手起業家たちに私が1時間、2時間とってアドバイスをしても、お礼のメールをくれるのは半分ほど。ここが鍛えられていないんですね。ピッチのうまさや学歴も一つの強みではありますが、それだけでは長く経営を続けることは難しいと思います。最後は、謙虚さや感謝、人との信頼関係が大切になってくるんです。
実は、優秀と言われる人ほど危ないんですよ。「なんとかしなければ」と思っていないから。逆に、優秀な人が心を低くしていたら、私のような人間は上がっていけません。世の中、うまくできているんです(笑)。
荻原:
中村さんは、これだけの実績がありながら、誰に対しても謙虚で、人を大切にされる。その姿勢から、私自身いつも学んでいます。

荻原:
今回の1,500km祈願ウォーク、そもそもの目的を教えていただけますか。
中村:
一番の目的は、祈願なんです。今回のウォークは、先祖のお墓から出発しました。今、私たちは次世代地熱発電のクローズドループ技術に挑戦しています。この掘削実証を成功させるために、先祖の力も借りたい。そんな想いを込めて、約1,500kmの祈願ウォークに挑戦しています。
もちろん、58歳でどこまで歩けるのか、体力と精神力を鍛えたいという気持ちもあります。
それから、歩きながら経営談義ができるんじゃないか、普段のZoomミーティングも歩きながらできるんじゃないか、ということも試してみたかった。やったことがなかったので、一度やってみようと。息子たち3人も含めて、経営仲間など50人ほどが一緒に歩いてくれることになっています。本当にありがたいですね。
荻原:
38日目を終えて、いかがですか。
(※取材は、中村さんが大阪を出発して38日目、青森で合流した日に行いました)
中村:
体も変わっていくし、精神的にも変わっていきますね。実は去年、山登りで二度大きな怪我をしているんです。そこから体力がガクンと落ちて、このままぼちぼち衰えていくのかな、と曲がり角を感じていた。それで、歩いてみようと始めて、実際にここまで来られたのは大きいですよね。
足に力を入れて地面を蹴る。若い頃は当たり前にあった力が、怪我をしてから衰えていた。歩くことでそれを呼び覚ましてもらったし、足に筋肉がついて変わってきました。体と心はつながっているから、自信にもつながっている気がします。
荻原:
経営者が歩きながら考えることは、おすすめですか。
中村:
メチャメチャおすすめですよ。基本的に前向きになりますから。
これまでの経営談義は、会議室でお茶を飲みながらでした。そればかりだと体力はどんどん落ちていく。新鮮な空気を吸いながら歩くと、思考がポジティブになるんです。
私たちは短期的な結果ではなく、すごく長いスパンで物事を見るのが好きなんですよ。特に、シニアに手が届く経営者が、これから長く頑張れるかどうかは体力で決まると思っています。休みだしたら、どんどん休まないといけない体になる。黙っていても落ちていく年齢ですから、ここから鍛えるなら、歩くことは基礎です。
荻原:
四国のお遍路も、仲間の方々と歩かれていますよね。
中村:
素晴らしい6人の仲間が基本で、そこにいろんなゲストが来ます。四国を歩く経営者のグループは、もともと数グループしかなかったのが、今では70人ほどがいろんなグループで歩いていると聞きます。歩くことの良さや、経営者同士が歩きながら語り合う「ウォーキング談義」の良さは、体験しないと分からない。でも体験した人は、わざわざ東京から毎月飛行機で四国まで行って、歩くわけです。自然の中を歩くと、心がまったく違いますから。
今回は息子とも1日歩いて、語り合ったら、いい絆になりました。1日30kmというと、普段歩いていない人には大変に見えるけれど、続けていれば普通になる。ただ、それだけで「親父も頑張っているんだな」と分かりやすく伝わりますよね。
オギちゃんも東京で仲間たちとやったらいいよ、歩きながらの経営談義。
荻原:
たしかに!場所選んだりして、仲間たちとやってみても良いかも知れませんね!
荻原:
中村さんはレジルを上場まで導いた後、Team Energyで次々と新しい挑戦をされています。その後、レジルはTOBという形になりました。どういう流れだったのか、聞かせていただけますか。
中村:
私はしばらく前に上場会社であるレジルの経営からは離れていて、株主として関わっていました。そしてレジルからTeam Energyに移り、こちらで新しいことをやりまくっていたわけです。今は地下を掘削するベンチャーに大きな資金を投じて、クローズドループに挑戦しています。
TOBについては、上場している以上、誰が株を買うかは選べませんよね。経営チームとも話し合いながら、会社にとって一番いい形はどんな選択肢なのかを考えていました。そんな中で、経営チームが持ってきたのがTOBの話だったんです。
荻原:
売却の前に、新しい目標をすでに見つけていらっしゃったんですね。
中村:
そうです。58歳の今が一番大きな勝負をしにいっているし、60歳になったらもっと大きな勝負をしにいきます。お金を残そうなんてまったく考えていません。
社員は安心や安定を求めますし、グループ各社の社長は社員の安心と安定を考えないといけない。でも私のポジションでそれを考えていたら、何も挑戦できなくなる。そう思えば、気楽なポジションで勝負させてもらっているんです。
荻原:
いや、一番リスクを背負っていらっしゃいます。
中村:
リスクといっても、お金がなくなったところで、これだけの経験と体力が残っていれば何でもできますから。そう思ってやっています。
荻原:
中村さんを見ていていつも尊敬しているのは、自ら高い目標を掲げ、それを乗り越えようと努力し、常に自己更新し続けていることです。私も3度目の起業ですが、中村さんの背中を見ていると、まだまだだと思わされます。どうしてそんなことができるんでしょうか。
中村:
人生を、基本的に自分のものだと思っていないんですよ。借りものだと思っている。この体も使わせてもらっているだけで、いずれは死んでいく。その間に借りものをうまく使わないと申し訳ないな、と。先祖を代表して自分が何かをやっているのなら、やらなきゃいけないよね、と。
そう思うと、自分の力じゃないような気がしてくるんです。自分で頑張らなきゃ、というのではなく、変にラフになれるんですよね。
荻原:
おーなるほど!その想いについて、もう少し聞かせてください。
中村:
会社を売却して大きなお金が入ってきた時、これで好きなように旅行でもしようかと、一瞬思うのかなと思ったんです。そう思うことに、ちょっと恐怖を感じました。これで自分は止まってしまうんじゃないか、と。
でも実際にお金が入って、余ったお金をどうするかという話をしていても、全然面白くないんですよ。お金は、苦しみながら仕掛けていく時や、銀行に返済を迫られている時には必要だと思う。でも持ってしまったら、こんなものは要らないな、と。何も変わりませんしね。原動力はお金じゃないんだな、と分かりました。
だから、大きく育てた会社をさらに大きくする道ではなく、また違う会社を次々と作って、一からの苦しみを味わっているわけです。せっかく法務も財務も組織を作ったのに、また一から時間を取られる。でも、作り直している時は面白いし、新たな出会いもある。そのうち、組織があろうがなかろうが関係ないと思えてくる。人と比べることにもまったく興味がないんです。
結局、新しいことに燃えて、思いついた構想をワーッと語っている時が一番楽しい。今でもそうです。常にお金はないですけどね(笑)。それでも、株主への責任は常に大切にしてきましたし、基本的に人とは争わない。
そうやって大きな構想を描いていると、自然と大きな方々と関わるようになります。小さな話ばかりしていると、付き合う人も変わってしまう。構想の大きさが、出会う人を決めるんだと思います。
荻原:
最後に、ロケットスターに期待することを聞かせてください。
中村:
ロケットスターは3人の強みが噛み合った、いい組織だと思うんです。それに、オギちゃんには数百人規模の会社を経営してきた経験がある。その組織力と経験を生かして、地方の会社の再建と成長をどんどん手がけていってほしいですね。
私も今回、日本海側をずっと歩いてきましたけど、こういう地域にも、きっと価値ある会社が眠っているんですよ。各地の地銀さんともしっかりルートを作って、もっともっと活躍してほしいと思っています。
荻原:
ありがとうございます。3人で力を合わせていきます!そして各地の地銀さんとも手を携えながら、地方の会社の再建と成長に一社一社向き合っていきます。残りの道のりとクローズドループの成功を、心から祈っています。今日は本当にありがとうございました。

70社ほどを立ち上げてきた中村さんが、ロケットスターに見たものは「覚悟の確認」と「規律」でした。多くの会社を作り、多くを学んできた方からの評価だからこそ、2号ファンドに向かう私たちにとって大きな確信になりました。出資にとどまらず、ご縁をつなぎ、勉強会を開いてくださる中村さんの背中から、私自身、同じ起業家として学び続けています。
ロケットスターはこれからも、二重の目利きで選び、事業力で育てるという投資哲学のもと、中小企業の経営グロースを実現していきます。
※本インタビューは2026年10月に実施しました。内容は本人確認のうえ掲載しています。
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