ホームサーチャーたちの物語

承継後のリアルvol,3~宮田彩也氏が語る、PMIと「チームで戦う」ということの意味

2026/6/14

承継後のリアルvol,3~宮田彩也氏が語る、PMIと「チームで戦う」ということの意味

【スピーカー】 宮田彩也(みやた・あや)

web creation株式会社代表取締役。前職では6名から450名規模の組織を作り上げ、電通デジタルへの売却を成功させた。2025年10月に事業承継。デジタルマーケティング領域を軸に、新規クライアント開拓と組織構築を推進中。

 

【インタビュアー】 荻原猛(おぎわら・たけし)

株式会社ロケットスター代表取締役社長CEO。ソウルドアウト株式会社を設立し東証一部上場、博報堂DYホールディングスへのTOBを経て、2023年4月にロケットスターを設立。


前職では6名から450名規模の組織を作り上げ、電通デジタルへの売却を成功させた宮田彩也氏が、2025年10月にweb creation株式会社を承継してから半年が経過した。

承継直後の苦しさとチームの支えについて率直に語ってもらった。


Q1. 承継から半年が経ちました。今の率直な心境を教えてください。

荻原:承継から半年が経ちました。今の宮田さんの率直な心境を教えてください。

 

宮田:ようやく少し落ち着いてきた、というのが正直なところです。

 

承継から半年が経った今、ようやくそう感じられるようになりました。承継直後の数カ月は、頭の中が常にフル回転しているのは当然として、想像していたよりも新規の数字を作ることが難しく、毎日溺れないように必死にもがいている感覚に近かったです。

 

前職でも社長を経験していましたが、あの時はパートナーが固定されていたので、役割分担され、自分は組織を作ることがメインの役割でした。10人を50人に、50人を100人にしていくことを考えながらコツコツやっていた。でも今は、組織づくりはもちろん、自分で数字も作りに行かなければならない。組織を作ることと数字を作ること、両方を同時に行うことは全然違うんだと改めて痛感しました。

 

ただ、初めて新規成約が決まり、翌月にも決まったことで、案件が決まっていく一連の流れが見えてきて、不安の質が変わってきています。中小企業の経営者の悩みの8割は売上が伸びれば消えると言われますが、本当にその通りで、新規の発注が決まるだけで気持ちが全然違います。数字も承継後のバタバタもありながら着実に新規も獲得でき、半年経ってようやく前を向いて走れる感覚が出てきました。

 

Q2. 事前のDDと、実際の経営のギャップはどの程度ありましたか。

荻原:事前のデューデリジェンスと、実際に経営に入ってからのギャップはどの程度ありましたか。

 

宮田:大前提として、聞いていた話と全然違ったという感覚はありませんでした。

 

ただ、数字や資料だけでは見えない部分がたくさんあることは実感しました。取引先が存在しているということと、今後も同じペースで数字が積み上がっていくかどうかは別の問題です。会社の方針転換や市場環境の変化が事業に繊細に影響してきます。

 

改めて感じたのは、DDの段階でクライアントの実態により深く踏み込んでおくべきだったということです。財務数値の確認に加えて、主要クライアントとの関係性の深さや受注の再現性を、もう一段細かく検証しておけばよかったと思います。

 

Q3. 前職の経験が活きた場面と、そうでなかった場面を教えてください。

荻原:PMIの局面で、前職の経験が活きた場面と、そうでなかった場面を教えてください。

 

宮田:活きたのは、営業力と人との関係構築です。同じデジタルマーケティング業界出身ということもあり、業界構造や商習慣の理解は持った状態で臨めました。過去の人脈にも助けられた部分が非常に大きいです。

 

一方でそうでなかった部分もあります。自分の営業力だけでは会社は成り立たない、ということを痛感しました。山家さんには事業面をあらゆる面でフォローしてもらっていて、八田さんには数字管理だけでなく精神面にもサポートしてもらっています。荻原さんからは社長としての考え方、『全体を俯瞰して客観的に見て決断する』という視点など、多くの学びがあります。

 

前職の社長経験と比べると、今の方が会社の規模は小さくても、ロケットスターの皆さんから求められていることの水準は圧倒的に高い。そのため、ある意味、今初めて本当の意味での社長業を体験している感覚ですし、社長として成長している実感もあります。

 

Q4. 社員との関係はどう構築してきましたか。

荻原:社員との関係はどう構築してきましたか。最初の接し方で意識したことはありますか。

 

最初から意識したのは、急に全部変えないということです。新しい社長が来ると、社員は何を考えているんだろう、どうするんだろうと不安になります。積み上げてきた歴史や文化をリスペクトし、否定しないという姿勢を徹底しました。

 

承継後1〜2カ月で全社員との1on1を終え、キーマン社員とは今も毎週1on1を続けています。「あなたのことを教えてください」というスタンスで接してきたことで、この人には話してもいいかな、という空気が少しずつ生まれてきていると感じています。

 

社員の離職は半年で1名でした。入社9カ月の未経験採用のメンバーで、数字のプレッシャーに耐えられなかったケースです。未経験採用をしている以上、一定の離職は避けられない現実ですが、それ以外のメンバーは全員残ってくれています。

 

Q5. 前オーナーとはどのような関係ですか。

荻原:前オーナーとは現在どのような関係ですか。引き継ぎは円滑に進みましたか。

 

宮田:関係は非常に良好です。引き継ぎも円滑に進みました。

 

前オーナーの高橋さんは、こちらが100問投げれば100問返してくださいました。電話でもテレカンでも、スケジュールも含めて引き継ぎ不足だと感じたことは一度もありません。

 

承継前はよく見えていない部分もありました。でも実際にこうして承継して深く話をしてみると、20年間会社を守り育ててきた方の重みというものが伝わってきました。今は純粋に敬意を持っています。今後もし、高橋さんが新しく会社を立ち上げられた際には「一緒にできることがあれば」と声をかけていただきました。そういう関係を作れたことを、本当に嬉しく思っています。

 

Q6. ロケットスターとは、承継後どのような形で関わっていますか。

荻原:ロケットスターとは、承継後も継続的に関わっていますか。具体的にどんな形で。

 

宮田:一言で言うと、チームで戦っているという感覚です。

 

山家さんとは週2回定例ミーティングがあり、事業内容から課題、今後の方向性まで深く理解した上でアドバイスをいただいています。八田さんとは週1回「何でも聞いていい」という時間を作っていただいており、実務から法務、考え方まで無邪気に相談できる場です。荻原さんとはRSGや1on1を含めて月1回以上、1時間以上の時間をいただいています。荻原さんの社長経験からくるアドバイスは刺さります。自分では気づきにくい部分を客観的に指摘してもらったり、新しい視点をもらったりしています。

 

三者三様の関わり方で、それぞれの形で支えてもらっているというのが実感です。

 

クライアントの紹介という面でも、大きな助けをいただいています。山家さんからは複数紹介いただき、他にもNDA締結まで至った案件も複数あります。その他クライアントについては自分でアカウントを開いたところに、同じロケットスターのサーチャーでもある和泉さんにプッシュしていただく形で繋がりが深まりました。こうした連携が生まれることが、チームで戦っているという実感につながっています。

 

名義だけの取締役がファンドの関与の典型だとしたら、ロケットスターはその対極にあります。

RSG(リアル セッション ギルド)という場について

宮田:ロケットスターには、サーチャー全員が定期的に集まるRSG(リアル セッション ギルド)という場があります。

 

この場の存在が、私にとっての大きな支えになっています。家族には心配をかけたくないから強がる。友人に話しても「大変だよね、みんなそうだよ」で終わる。でもRSGではロケットスターのサーチャー全員が集まり、皆の前で全部本音で話せます。飯島さん、岩本さん、北方さん、和泉さん、それぞれがそれぞれの苦しさを抱えながら、でも前を向いて動いている。その姿を見て、「苦しいのは自分だけじゃないんだ」と思えることの力は、想像以上に大きいです。

 

一人で起業していたら、どうなっていたかわかりません。苦しい局面で一人で判断し続けることの消耗は、経営経験がある人間でも想定以上です。その消耗を分かち合い、判断を助けてくれるチームがいたからこそ、今ここに立てています。RSGはその象徴的な場です。

 

Q7. サーチ期間中にやっておけばよかったことはありますか。

荻原:今振り返って、サーチ期間中にもっとやっておけばよかったと思うことはありますか。

 

宮田:承継を検討している段階で、「この会社でどう売上を作るか」という営業シミュレーションを具体的にやっておくことをお勧めします。自分ができなかったことは、誰に何をどう売るかという解像度を上げておくこと、もっと言えばプレ営業しておくことくらいが、承継直後のスタートダッシュに直結するのではないかと思います。

 

Q8. これからサーチャーを検討している方に、一言お願いします。

荻原:これからサーチャーを検討している方に、一言お願いします。

 

宮田:経営者になりたいという気持ちはもちろん大切です。ただ、それ以上に「誰とやるか」が私にとっては重要でした。

 

社長という仕事は、皆さんが想像しているよりも、泥臭いです。想像しているよりも、孤独です。苦しいと聞いて理解して、自分なりに覚悟してきたとしても、それよりもっと苦しい局面があります。その時に、「この人たちとならやっていける」という確信がなければ、本当に厳しいと思います。

 

ロケットスターのチームと一緒にやると決めたことが、私にとっての一番の支えになっています。どのファンドと組むかを決める時に、その会社の人たちと長く深くやっていきたいと思えるかどうかを、ぜひ大事にしてほしいと思います。

 

最後に腹をくくれるかどうか。それだけです。でも、腹をくくった先に一人でいるのと、チームがいるのとでは、大きく違います。

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